転職やキャリア相談を考える際、「キャリアカウンセラー」と「キャリアアドバイザー」という言葉を耳にする機会が増えています。一見同じような職種に思えるこの2つですが、実は明確な違いがあります。
本記事では、これらの職種の役割の違いから必要な資格、活躍できる場所まで詳しく解説します。自分のキャリアに悩んでいる方や、これらの職種を目指している方にとって、最適な選択をするための判断材料をお伝えします。
目次
キャリアカウンセラーとキャリアアドバイザーの基本的な違い

キャリアカウンセラーとキャリアアドバイザーは、どちらも人のキャリア支援を行う専門職ですが、アプローチの仕方や働く環境に大きな違いがあります。
簡単に言うと、キャリアカウンセラーは「長期的な視点でのキャリア形成支援」、キャリアアドバイザーは「具体的な転職活動のサポート」が主な役割です。
項目 | キャリアカウンセラー | キャリアアドバイザー |
---|---|---|
主な目的 | 長期的なキャリア形成支援 | 転職・就職の成功支援 |
資格要件 | 専門資格推奨(必須ではない) | 資格不要(実務経験重視) |
活躍場所 | 企業・教育機関・公的機関 | 人材紹介会社が中心 |
支援期間 | 中長期的な関係性 | 短期集中型 |
上記の表から分かるように、両者の最大の違いは支援のスタンスにあります。キャリアカウンセラーは相談者の内面的な成長や価値観の整理を重視し、キャリアアドバイザーは実際の転職成功に向けた具体的なサポートを行います。
キャリアカウンセラーとは?

キャリアカウンセラーは、相談者との対話を通して、個人にとって望ましいキャリアの選択・開発を支援するキャリア形成の専門家です。単なる転職支援にとどまらず、相談者の人生全体を視野に入れた包括的なキャリア支援を行うのが特徴です。
職場での人間関係の悩みから将来への漠然とした不安、子育てや介護と仕事の両立など、仕事にまつわる様々な課題に対して、相談者自身が答えを見つけられるようサポートします。
重要なのは、答えを与えるのではなく、相談者が自分らしいキャリアを築けるよう支援することです。
キャリアカウンセラーの主な仕事内容
キャリアカウンセラーの仕事は、相談者の内面的な成長を促すカウンセリングが中心となります。具体的には、相談者の価値観や強み、興味関心を整理し、それらを踏まえた中長期的なキャリアデザインを一緒に考えていきます。
面談では傾聴スキルを活用し、相談者が自分自身について深く理解できるよう導きます。また、キャリア理論に基づいた専門的なアセスメントツールを用いて、相談者の適性や志向性を客観的に把握することもあります。
キャリア形成支援の特徴
- 相談者の価値観や強みの発見
- 中長期的なキャリアビジョンの構築
- 職業選択に関する意思決定支援
- ワークライフバランスの実現サポート
単発の相談で終わるのではなく、継続的な関係性の中で相談者の成長を見守り、節目節目でサポートを提供するのがキャリアカウンセラーの特徴です。このため、相談者との信頼関係の構築が何より重要になります。
キャリアカウンセラーと似たような職種としてキャリアコーチングがあります。
キャリアコーチングとはプロのコーチとの対話を通じて、自身のキャリアの方向性を見出し、具体的な行動計画を立てていく支援サービスです。
▼詳しくはキャリアコーチングとは?効果や料金体系、選び方を徹底解説の記事で解説しているので、ご参照ください。
キャリアカウンセラーが活躍する主な場所
キャリアカウンセラーは幅広い場所で活躍しており、それぞれの環境で求められる役割も異なります。活躍の場が多様なのは、キャリア支援のニーズが社会全体に広がっているからです。
企業内では人事部門に所属し、従業員のキャリア開発や社内異動の相談に応じます。最近では事業主によるキャリアコンサルティングの機会確保の責務が強化されるなど、法的な後押しもあり企業内での需要が高まっています。管理職との面談や退職予定者へのキャリア相談なども重要な業務です。
教育機関では、大学や専門学校のキャリアセンターで学生の就職活動支援や進路相談を担当します。就職活動の技術的なサポートだけでなく、学生が自分の将来を主体的に考えられるよう支援することが求められます。
活躍場所 | 主な業務内容 | 対象者 |
---|---|---|
企業内人事部門 | 従業員のキャリア開発・社内異動相談 | 在職中の社員 |
大学・専門学校 | 就職活動支援・進路相談 | 学生・卒業生 |
ハローワーク | 職業相談・就労支援 | 求職者・転職希望者 |
フリーランス | 個人向けキャリア相談・セミナー講師 | 一般個人 |
公的機関では、ハローワークや就労支援センターで求職者の職業相談に応じます。雇用保険の給付を受けながら転職活動をする方や、長期間仕事から離れていた方への復職支援なども行います。フリーランスとして独立し、個人向けのキャリア相談やセミナー講師として活動する道もあります。
キャリアアドバイザーとは?

キャリアアドバイザーは、主に人材紹介会社で働く転職支援の専門家です。「求職者の方との面談を行い、希望や経歴にあった求人をご紹介し、企業に推薦を行い、転職やキャリアの支援を行うこと」が主な仕事内容となります。
キャリアカウンセラーとの大きな違いは、具体的な転職成功にフォーカスしている点です。相談者の内面的な成長はもちろんですが、希望する企業への転職を実現することが最優先の目標となります。そのため、キャリアアドバイザーは営業であるという側面が強く、数値目標を持って業務にあたることが一般的です。
▼キャリアアドバイザーについては【人材業界を目指す人必見!】キャリアアドバイザーの仕事内容と将来のキャリアパスについて解説の記事でも詳しく解説しているので、ご参照ください。
キャリアアドバイザーの主な仕事内容
キャリアアドバイザーの業務は、求職者の転職活動を成功に導くための具体的なサポートが中心です。初回面談では求職者の経歴や希望条件を詳しくヒアリングし、最適な求人案件をマッチングします。
履歴書や職務経歴書の添削指導では、各企業が求める人材像に合わせた効果的な書類作成をサポートします。各企業が求める人材を把握しているキャリアアドバイザーならではの添削により、書類選考の通過率向上を図ります。
面接対策では模擬面接を実施し、想定質問への回答準備や立ち振る舞いの指導を行います。企業の社風や面接官の特徴なども事前に伝え、求職者が最大限のパフォーマンスを発揮できるよう支援します。
転職支援の具体的な流れ
- 初回面談でのヒアリング・希望条件の整理
- 求人案件の紹介・マッチング
- 応募書類の添削・作成サポート
- 面接対策・模擬面接の実施
- 内定後の条件交渉・入社日調整
企業と求職者の橋渡し役として、面接のスケジュール調整や選考結果の連絡、内定後の条件交渉なども重要な業務です。求職者だけでなく、企業の採用担当者との良好な関係構築も求められます。
キャリアアドバイザーが活躍する主な場所
キャリアアドバイザーの活躍場所は、人材紹介会社が圧倒的に多くなります。人材紹介会社は、リクルートエージェントやDODAなど大手人材紹介会社を中心とした総合型(職種や業種、年齢すべてに対応)と、特定の領域に絞り込んだ特化型の事業者に分けられます。
営業的な側面が強いのがキャリアアドバイザーの特徴で、キャリアアドバイザーが最終的に追う目標は売上、または粗利益です。人材紹介会社のビジネスモデルでは、転職が成立した際に企業から支払われる紹介手数料が収益源となるためです。
成果目標の管理が徹底されており、月間の面談件数、応募件数、内定獲得件数などのKPI(重要業績評価指標)を設定して業務を進めます。求職者支援だけでなく、企業ニーズの把握や新規求人案件の開拓なども重要な業務となります。
会社タイプ | 特徴 | 代表例 |
---|---|---|
総合型大手 | 幅広い業界・職種に対応 | リクルートエージェント・DODA |
業界特化型 | IT・金融・医療など専門領域 | レバテック・エムスリー |
職種特化型 | エグゼクティブ・営業など | ビズリーチ・営業職特化エージェント |
特化型の人材紹介会社では、特定の業界や職種に関する深い知識が求められます。IT業界特化であれば技術トレンドの理解、医療業界特化であれば医療従事者の働き方への理解が必要になります。企業と求職者双方のニーズを的確に把握し、最適なマッチングを実現することが求められます。
総合型と特化型の違いについては、人材紹介の総合型と特化型の違いを完全比較!選び方のポイントを徹底解説の記事で詳しく解説しているので、ご参照ください。
キャリアカウンセラーとキャリアアドバイザーの必要資格比較

両職種の資格要件には明確な違いがあります。キャリアアドバイザーは資格不要である一方、キャリアカウンセラーは法的な定義はないものの、国家資格キャリアコンサルタントの取得が専門性の証明として重視される傾向にあります。
「キャリアカウンセラー」という名称は、法的に定義された職業ではなく、誰でも名乗ることは可能です。しかし、実際の求人や業界内では、国家資格の保有が求められることも多くなっています。2016年4月には「キャリアコンサルタント」が国家資格化され、以降、キャリア支援の分野で公的な専門性の証として広く認知されるようになりました。
キャリアカウンセラーの主要資格
国家資格キャリアコンサルタントは、職業能力開発促進法に基づく名称独占資格であり、専門性・倫理性が問われる重要な国家資格です。取得には指定の養成講座修了または一定の実務経験が必要で、合格後は登録手続きと5年ごとの更新が義務付けられています。
国家資格キャリアコンサルタントの特徴 | 詳細内容 |
---|---|
法的根拠 | 職業能力開発促進法に規定 |
資格の性質 | 名称独占資格(5年ごと更新制) |
受験要件 | 養成講座修了または実務経験3年以上 |
職業倫理 | 守秘義務・信用失墜行為の禁止 |
民間資格であるCDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)も、日本キャリア開発協会(JCDA)が認定する資格で、国家資格化以前から高く評価されていました。
現在は国家資格取得者が一定の要件を満たせば併用取得できます。また、産業カウンセラー(日本産業カウンセラー協会)も心理学的アプローチに強みがあり、メンタルヘルス対応を含む幅広いキャリア支援が可能です。
キャリアアドバイザーの資格状況
一方で、キャリアアドバイザーは人材紹介や転職支援の現場で活躍する職種ですが、法的な資格要件は存在せず、未経験からでも挑戦可能です。評価のポイントはコミュニケーション力や営業スキル、目標達成意欲などであり、実績を重ねることで早期にキャリアアップを図ることも可能です。
キャリアアドバイザーに求められるスキル | 理由 |
---|---|
コミュニケーション力 | 求職者・企業双方との関係構築 |
営業・交渉スキル | 成約率向上・条件調整 |
市場知識・情報収集力 | 適切なマッチング実現 |
目標達成意欲 | 数値目標クリアへの推進力 |
人材紹介会社では、人物本位で採用を行う傾向が強く、営業経験や接客業経験を持つ人材が即戦力として評価されやすいです。マッチング件数や応募者対応数などの数値目標があるため、実行力と対人スキルが最重要視されます。
両職種の比較表
資格・要件 | キャリアカウンセラー | キャリアアドバイザー |
---|---|---|
国家資格キャリアコンサルタント | 推奨(専門性の証明) | 有利だが必須ではない |
民間資格(CDA・産業カウンセラー) | 評価されることが多い | 基本的に評価対象外 |
実務経験 | 理論と実践の両方重視 | 営業・接客経験が重要 |
なお、キャリアアドバイザーでも国家資格キャリアコンサルタントを取得していれば、より高度なキャリア支援が可能となり、企業側からの信頼獲得にもつながります。
将来的にキャリアカウンセラー職への転向や専門職へのキャリアアップを考えている場合、資格取得は有意義な選択肢と言えるでしょう。
どちらの職種を選ぶべき?適性を考える

自分にどちらの職種が向いているかを判断するには、まず自分の価値観や働き方の希望を整理することが大切です。人を支援したいという気持ちは共通していても、そのアプローチには大きな違いがあります。
長期的な視点で人の成長を見守りたいのか、短期集中で具体的な成果を出したいのか。この根本的な違いが職種選択の重要な判断基準となります。また、働く環境や収入面での違いも考慮すべき要素です。
キャリアカウンセラーに向いている人の特徴
キャリアカウンセラーには、人の内面的な成長に関心を持ち、長期的な関係性の中でサポートできる人が向いています。相談者の話をじっくりと聞き、相談者自身が答えを見つけられるよう我慢強く支援する姿勢が求められます。
カウンセリングスキルを活かしたい人や、心理学的なアプローチに興味がある人にも適しています。相談者の価値観や感情の変化を敏感に察知し、適切なタイミングで必要な支援を提供する能力が重要です。
キャリアカウンセラー向きの特徴
- 人の成長過程を見守ることに喜びを感じる
- 傾聴力に自信があり、相手の立場に立って考えられる
- 心理学やキャリア理論への興味関心が高い
- 答えを与えるより、相手の気づきを促すことを重視
また、継続的な学習意欲も必要な要素です。キャリア理論は常に進歩しており、新しい働き方や価値観の変化に対応するため、定期的な研修や勉強会への参加が求められます。相談者一人ひとりの状況に合わせたオーダーメイドの支援を行うため、柔軟性と創造性も重要な資質といえるでしょう。
キャリアアドバイザーに向いている人の特徴
キャリアアドバイザーには、営業的な要素を楽しめる人や、明確な成果を数値で測ることにやりがいを感じる人が向いています。転職成功という具体的なゴールに向けて、スピード感を持って業務を進められる人が活躍できる職種です。
コミュニケーション力が高く、初対面の人ともすぐに信頼関係を築ける人にも適しています。求職者だけでなく企業の採用担当者とも良好な関係を維持する必要があるため、多様な人との関係構築力が重要です。
目標達成への強い意欲も必要な要素です。月次・四半期・年間といった期間で設定される数値目標に向けて、計画的に業務を進める能力が求められます。
キャリアアドバイザー向きの特徴
- 営業活動や数値目標への取り組みが苦にならない
- スピード感のある業務環境を好む
- 多くの人との関係構築が得意
- 具体的な成果や結果を重視する
また、市場動向への敏感さも重要です。転職市場は経済情勢や業界トレンドの影響を受けやすく、常に最新の情報をキャッチアップする必要があります。求職者に適切なアドバイスを提供するため、企業の採用動向や給与相場などの情報収集能力も求められるでしょう。
それぞれの職種の将来性と市場動向

両職種とも、働き方の多様化や人生100年時代の到来により、今後さらに重要性が高まると予想されます。
企業の人材戦略においても、キャリア支援の重要性が増しています。終身雇用制度の変化により、従業員の主体的なキャリア形成支援が企業の重要な責務となっているためです。
需要増加の背景要因
働き方改革の推進により、ワークライフバランスやキャリアの多様性への関心が高まっています。副業・複業の解禁、リモートワークの普及、ジョブ型雇用の導入など、従来の働き方の枠組みが大きく変わる中で、専門的なキャリア支援の必要性が高まっています。
人材流動性の向上も追い風となっています。転職が一般的になり、キャリアチェンジやキャリアアップを目指す人が増加している中で、専門的なサポートを求める声が高まっています。
デジタル化による業務変化
一方で、AIやデジタル技術の進歩により、業務の一部が自動化される可能性もあります。求人検索や基本的なマッチングは既にAIが活用されており、今後さらに高度化が進むと予想されます。
しかし、人間の感情や価値観に寄り添った支援は、AIには置き換えられない領域です。むしろテクノロジーを活用することで、より高度で付加価値の高いキャリア支援が可能になると考えられています。
両職種とも、単純な業務はテクノロジーに置き換えられる一方で、より専門性の高い、人間らしい支援が求められるようになるでしょう。継続的なスキルアップと専門性の向上が、将来にわたって活躍するための重要な要素となります。
まとめ:自分に合ったキャリア支援の仕事を見つけよう
キャリアカウンセラーとキャリアアドバイザーは、どちらも人のキャリア支援を行う重要な職種ですが、そのアプローチと働き方には明確な違いがあります。キャリアカウンセラーは相談者の内面的成長と長期的なキャリア形成を支援し、キャリアアドバイザーは具体的な転職成功に向けた実践的サポートを提供します。
どちらを選ぶかは、あなた自身の価値観や働き方の希望によって決まります。人の成長を長期的に見守りたいなら、じっくりとした関係性を重視するキャリアカウンセラーが向いているでしょう。一方、スピード感のある環境で具体的な成果を追求したいなら、キャリアアドバイザーが適しています。
重要なのは、どちらの職種も社会にとって必要不可欠な役割を担っているということです。働き方が多様化し、人生100年時代と言われる現在、専門的なキャリア支援のニーズはますます高まっています。
自分の適性を見極めて最適な職種を選び、継続的なスキルアップを図ることで、多くの人のキャリア形成に貢献できる専門家として活躍できるでしょう。まずは両職種の違いをしっかりと理解し、自分らしいキャリア支援のあり方を見つけてください。

