転職活動でよく目にする「カジュアル面談」。従来の面接と何が違うのでしょうか。この記事では、カジュアル面談の基本から当日の流れ、適切な服装まで転職成功に必要な情報をまとめて解説します。
目次
カジュアル面談とは

カジュアル面談は、企業と転職希望者が選考前にリラックスして対話する場です。ほとんどの場合、合否判定ではなくお互いを知ることが目的になります。
厚生労働省が公開している調査によると、面接前後の採用活動の工夫として多くの企業がカジュアル面談を導入しています。また、株式会社学情の調査によるとカジュアル面談を実施していると回答した企業が52.4%に上り、前年度より急増したことが分かっています。
参照:厚生労働省「『職場情報の開示を通じた 労働市場の見える化に関する研究調査』報告書」
転職を考えている人にアプローチしたり、入社後のミスマッチを防いだりする効果的な手法としてカジュアル面談は注目されています。
カジュアル面談と面接の違いは?
カジュアル面談と面接は目的から雰囲気まで大きく違います。
まずカジュアル面談では相互理解が主な目的で、面接では合否判定が目的となっています。また、カジュアル面談は面接前に行われることがほとんどです。
雰囲気や服装についてもカジュアル面談と面接では以下のような違いが挙げられます。これらは後ほど詳しく解説します。
項目 | カジュアル面談 | 面接 |
---|---|---|
目的 | 相互理解・情報交換 | 合否判定 |
タイミング | 選考前 | 選考中 |
雰囲気 | リラックスした対話 | 緊張感のある質疑応答 |
服装 | 私服・オフィスカジュアル | スーツ |
以上の点を踏まえ、カジュアル面談は企業と転職希望者の相互理解の場とされています。
カジュアル面談のメリットは?
カジュアル面談の最大のメリットは、自身の考えを率直に話せることです。また、企業の担当者からリアルな職場環境や業務内容を知ることができるでしょう。
入社後のミスマッチを防げる点も重要です。実際の業務や社風が自分に合うかを確認でき、後悔のない転職につながります。また、自分のキャリア観を整理する機会にもなり、転職活動全体の質が向上します。
カジュアル面談の主なメリット
- 企業と本音を共有しやすい
- ミスマッチを防げる
- 自身のキャリア観を整理できる
カジュアル面談を受けることによるメリットは以上のような点が挙げられます。カジュアル面談を受けることでより納得のいく転職につながるでしょう。
カジュアル面談で落ちることは?
基本的に合否判定がないことが多いですが、その後の選考に全く影響しないわけではありません。ビジネスマナーに欠ける行動や、企業の価値観と大きく違う発言をした場合、選考参加を見送られる可能性があります。
ただし、これは「落ちる」というより「マッチしない」と判断されるケースです。企業と転職希望者との相互理解の結果として、お互いが合わないと分かることは本来の目的に沿っています。
落ちる可能性を考え、過度に緊張する必要はありませんが、最低限のマナーは守りましょう。
カジュアル面談の事前準備で必要な4つのこと
カジュアル面談を有効活用するには、事前準備が欠かせません。準備不足では貴重な機会を無駄にしてしまいます。
カジュアル面談の事前準備
- 企業の基本情報をリサーチする
- 自己分析とキャリアの見直しを行う
- 聞きたい質問リストを作成する
- 転職の軸と希望条件を整理する
ここでは、面談前に必ずやっておくべき以上の4つの準備を解説します。
1.企業の基本情報をリサーチする
企業の基本情報をリサーチすることは、カジュアル面談をより良い時間にするために重要です。基本情報を踏まえた質問を行うことで、企業をより深く理解することができるでしょう。
まず、企業の公式サイトやIR情報で事業内容とサービスを把握しましょう。採用サイトや社員ブログ、SNSから企業文化や働き方の雰囲気も確認できます。業界での立ち位置や競合他社との違いも調べておくと、質問の質が向上します。
企業の公式サイトだけではなく、最近のニュースリリースや新規事業の情報もチェックしておきましょう。新規事業はPRTIMES、SNSは企業の公式のアカウントやOpenWorkがおすすめです。
2.自己分析とキャリアの見直しを行う
これまでの経歴やスキル、強みを整理しておくことで、企業との擦り合わせがスムーズになります。
職歴やプロジェクト、成果を時系列で整理しましょう。技術スキルやソフトスキル、資格も棚卸しします。仕事で大切にしていることや、やりがいを感じる瞬間も明確にしておきます。5年後、10年後のキャリアビジョンも考えておくと、面談での会話が深まります。
企業に対して自身を適切にアピールするためにも自己分析とキャリアの見直しは必ず行いましょう。
3.聞きたい質問リストを作成する
企業理解を深めるため、事業や業務に関する質問を事前に準備しましょう。先に述べたように企業の基本情報や自己分析、キャリアを踏まえ質問を準備することが重要です。
たとえば具体的な仕事内容やチーム構成、1日の流れについて質問を用意します。研修制度や昇進ルート、キャリアパスも重要なポイントです。社風やコミュニケーション、働き方の実態も聞いておきたい項目です。
今後の事業展開や課題、求める人材像についても質問リストに加えましょう。具体的な質問例は後ほど紹介します。
カジュアル面談をより良い時間にするため、面談を通じて知りたいことをきちんと整理することが重要です。
4.転職の軸と希望条件を整理する
転職理由を明確にし、譲れない条件や希望キャリアを整理しておきます。
現職の課題や転職で解決したいことを明確にしましょう。給与や勤務地、働き方、企業規模などの条件に優先順位をつけます。新しい分野や役割へのチャレンジ意欲も整理しておきます。
残業時間や休日出勤、有給取得の実態についても、どこまで許容できるかを考えておきましょう。企業とのミスマッチを防ぐため、転職の軸や希望条件は必ず整理しましょう。
カジュアル面談当日の流れ

カジュアル面談は通常1時間程度で、5つのステップで進行します。各ステップでの注意点とポイントを理解して、効果的な面談にしましょう。
カジュアル面談のステップ
- 自己紹介とアイスブレイク
- 企業側からの会社説明
- 転職希望者の状況ヒアリング
- 質疑応答・逆質問タイム
- 今後の流れとクロージング
必要や状況に応じて内容は異なることがありますが、以上のステップでカジュアル面談を進める企業が多いでしょう。それではそれぞれのステップについて解説します。
1.自己紹介とアイスブレイク
カジュアル面談の始めは、お礼や簡単な挨拶を行いましょう。その後に自己紹介を行います。担当者から指定がない場合は、自己紹介は要点を絞って1-2分で簡潔に行い、名前、現職、経験年数などを伝えましょう。
この段階でアイスブレイクとして、面談で何を聞きたいか、どんな情報を得たいかを確認された場合は事前に整理した内容を簡潔に共有します。
緊張をほぐす軽い会話から始まることもあるため、リラックスして参加しましょう。企業側も親しみやすい雰囲気作りを心がけているため、自然体で臨むことが大切です。
2.企業側からの会社説明
企業の担当者から簡潔な会社説明が行われる場合もあります。この時間は企業の基本情報を理解する貴重な機会となります。
なぜ今採用するのか、どんな課題を解決したいかといった募集背景、求めるスキルや経験、人物像、カルチャーフィットについても説明があるでしょう。
メモを取りながら聞き、事前に作成した質問事項と照らし合わせて、気になる点は質問の機会で確認することが重要です。
3.転職希望者の状況ヒアリング
企業側から現在の状況や転職活動の進捗について質問されます。在職中か離職中か、他社の選考状況なども聞かれることがあります。
これまでの業務内容や得意分野、実績についても詳しく聞かれるでしょう。事前に整理した経歴やスキルを素直に共有しましょう。
転職を考える理由や実現したいことについても質問される場合もあります。現職での不満や課題だけでなく、今後どんなキャリアを築きたいかという前向きな動機も伝えましょう。
今後のキャリアプランやチャレンジしたいこと、働き方の希望についても素直に答えましょう。企業との擦り合わせを通じて、お互いの希望を明確にできます。
4.質疑応答・逆質問タイム
事前に作成した質問リストを活用して、積極的に質問しましょう。実際の業務例や成功事例、失敗談など具体的なエピソードを聞くと理解が深まります。抽象的な説明だけでは分からない実態を知ることで、入社後のイメージがより明確になります。
課題や大変なこと、改善したいことについても率直に質問しましょう。ネガティブな情報も含めて正直に教えてもらえることが、カジュアル面談の大きなメリットです。
一方的な質問にならないよう、対話を意識した進行が大切です。企業側からの質問にも丁寧に答え、双方向のコミュニケーションを心がけましょう。
自分の考えや経験も積極的に共有することで、より深い相互理解につながります。質問は事前に準備したものだけでなく、会話の流れで生まれた疑問も遠慮なく聞いてみてください。
5.今後の流れとクロージング
面談の最後に、今後の選考プロセスやスケジュール、必要な準備について説明があります。書類選考、一次面接、最終面接といった流れや、各ステップの所要時間、判定期間なども確認できる場合があります。
選考に進む場合の日程調整や連絡方法も確認します。担当者の連絡先や返信期限、選考辞退する場合の連絡方法なども聞いておきましょう。
その後、時間をとってもらったことへのお礼と、今後への期待を伝えましょう。相互の意思確認を行い、次のステップを明確にして面談を終了します。
面談で得た情報をもとに、自分なりに感じたことや興味を持った点を簡潔に伝えると、真剣に参加していたことが相手に伝わります。
カジュアル面談の服装マナー【男女別・オンライン対応】

カジュアル面談でも第一印象は重要です。ビジネスマナーの一環として服装に配慮する事も心掛けましょう。
また、適切な服装で参加することで、相手に好印象を与えられます。これから、男女別とオンライン面談での注意点を解説します。
男性の服装:ビジネスカジュアルが基本
ジャケットとチノパン、シャツとスラックスの組み合わせといったビジネスカジュアルがおすすめです。色合いはネイビー、グレー、ベージュなど落ち着いた色を選びましょう。
Tシャツや短パン、サンダルはNGです。派手な色柄も適していません。清潔な靴とシンプルな時計、整えられた髪型で全体をまとめましょう。カジュアルといっても、ビジネスシーンに適した装いを心がけることが大切です。
ビジネスカジュアルに不安がある場合はスーツを選んで問題ないでしょう。
女性の服装:清潔感のあるオフィスカジュアル
ブラウスとパンツまたはスカート、そしてジャケットの組み合わせが適しています。色合いはネイビー、グレー、白、ベージュなど上品な色を選びましょう。
露出の多い服や派手なアクセサリー・メイクはNGです。カジュアルすぎる服装も適していません。自然なメイクと清潔感のある髪型、シンプルなアクセサリーで上品にまとめることがポイントです。
男性の服装と同様にビジネスカジュアルに不安がある場合はスーツを選んで問題ないでしょう。
オンライン面談での服装と注意点
まず、画面に映る上半身はしっかりとした服装を選びましょう。基本的には全身の服装に気を配るようにすることをおすすめします。
また、シンプルな背景と適切な照明、雑音の少ない環境を整えましょう。カメラとマイクのテストを行い、安定したネット環境の確保ができているかアングルや音声に問題がないかといった確認も必須です。
アングルについてはカメラ目線を意識し、適切な距離で表情が見えやすい角度に調整します。技術的なトラブルで面談に集中できないことがないよう、事前準備を怠らないようにしましょう。
厚生労働省がオンライン面接(WEB面接)のチェックポイントを公開しています。オンライン環境に不安がある方は是非参考にしてください。
参照:厚生労働省「オンライン面接(WEB面接)のチェックポイント
カジュアル面談で聞いておくべき質問

効果的な質問は、企業理解を深め、自分との適性を判断する重要な手がかりになります。
ここでは4つのカテゴリーに分けて、具体的な質問例を紹介します。
業務内容・働き方に関する質問
具体的な配属先や担当業務について詳しく聞きましょう。実際の働き方をイメージできる具体的な情報を収集することが重要です。業務内容や働き方について以下のような質問がおすすめです。
業務内容・働き方に関する質問例
- 入社後はどのような業務を担当することになるか
- 1日の業務の流れは具体的にどうか
- チームの構成や役割分担はどうか
- リモートワークと出社の頻度はどの程度か
- 繁忙期と閑散期の業務量の差はあるか
- 残業時間は月平均でどの程度か
- 有給休暇の取得率や取りやすさはどうか
これらの質問を通じて、入社後の具体的な働き方をイメージし、自分のライフスタイルと合うかを判断しましょう。
企業文化・職場環境に関する質問
職場の雰囲気や社風について率直に聞いてみましょう。実際に働く人の生の声を聞くことで、自分に合う環境かを判断できます。
具体的には以下のような質問がおすすめです。
企業文化・職場環境に関する質問例
- 社員同士のコミュニケーションはどのような雰囲気か
- 上司や先輩との距離感はどうか
- 意思決定のプロセスはどのような形か
- 新しいアイデアや提案はしやすい環境か
- 社内イベントや交流の機会はあるか
- 職場の年齢層や男女比はどのようであるか
企業文化・職場環境に関する質問から企業文化を理解し、自分の価値観との適合性を確認しましょう。
キャリアパス・成長機会に関する質問
キャリアパス・成長機会に関する質問を通じて入社後の研修制度やスキルアップ支援について確認しましょう。長期的なキャリア形成の視点で質問を用意することが大切です。
以下のような質問がおすすめです。
キャリアパス・成長機会に関する質問例
- 入社後の研修制度はあるか
- 昇進・昇格の基準や仕組みはどうか
- 他部署への異動や新しいチャレンジの機会はあるか
- メンター制度やOJTの仕組みはあるか
- 資格取得やスキルアップの支援制度はあるか
- 管理職になるまでの一般的な年数はどの程度か
これらの情報を通じて、自分の成長目標と企業の支援体制が合致するかを判断しましょう。
事業戦略・将来性に関する質問
事業戦略・将来性に関する質問から企業の今後の事業展開や成長戦略を知り、安定性と成長性の両面から企業を評価することが重要です。
以下のような質問がおすすめです。
事業戦略・将来性に関する質問例
- 今後の事業展開や成長戦略はどのようであるか
- 業界での競合他社との差別化ポイントは何か
- 新規事業や新サービスの予定はあるか
- 5年後、10年後の会社のビジョンはどのようであるか
- 業界の動向をどのように捉えているか
- 今回の採用で解決したい課題は何か
これらの質問を通じて、企業の将来性と自分のキャリア目標との整合性を確認しましょう。
カジュアル面談後の対応とお礼メールの書き方

面談後の対応は、その後の選考や企業との関係性に大きく影響します。適切なタイミングと内容でお礼メールを送り、良好な関係を維持しましょう。
面談後24時間以内にお礼メールを送る
面談当日の夜または翌日の午前中にお礼メールを送るのが理想的です。件名は「カジュアル面談のお礼」のように、面談のお礼メールということが分かるようにしましょう。
基本構成は、挨拶、感謝、印象、今後の意向、結びの順番です。長文は避け、読みやすい分量を心がけます。具体的な印象や学んだことを盛り込むと、真剣に参加していたことが伝わります。
選考に進む場合のメール例文
面談の次の選考へ進むことを検討している場合のメール例を紹介します。
件名:〇月〇日面談のお礼(自分の名前) 株式会社〇〇〇〇様 お世話になっております。本日〇時より面談をしていただきました、〇〇(自分の名前)と申します。本日はご多忙の中、貴重なお時間をいただき誠にありがとうございました。 実際にお話を伺い、貴社の事業内容や職場環境について理解を深めることができました。特に○○の部分で共感し、ぜひ貴社で働きたいという気持ちが強くなりました。 もし可能でしたら、正式な選考プロセスに進ませていただければと思います。今後ともよろしくお願いいたします。 〇〇〇〇(自分の名前)電話:000-0000-0000メールアドレス:〇〇@xxx.com |
選考を辞退する場合のメール例文
面談後の選考を辞退する場合も丁寧にお礼を伝えましょう。また、お礼と辞退する旨だけではなく、辞退理由を簡潔に共有すると良いでしょう。
件名:カジュアル面談のお礼とご報告 株式会社〇〇〇〇様 本日〇時より面談をしていただきました、〇〇(自分の名前)と申します。本日はご多忙の中、貴重なお時間をいただき誠にありがとうございました。 詳しくお話を伺う中で、現在の私のキャリアプランと少し方向性が異なることが分かりました。大変恐縮ですが、今回の選考は辞退させていただきたく存じます。 貴重な機会をいただき、ありがとうございました。貴社のご発展を心よりお祈りしております。 〇〇〇〇(自分の名前)電話:000-0000-0000メールアドレス:〇〇@xxx.com |
その後の流れと連絡の取り方
企業からの連絡は通常1週間程度で届きます。日程調整などの連絡には早急に返信しましょう。1週間程度経っても連絡がない場合は、軽く確認の連絡を入れても構いません。
選考辞退を決めた場合は、できるだけ早く誠実に伝えます。理由は簡潔にまとめ、感謝の気持ちを忘れずに伝えましょう。将来的な機会に備えて、良好な関係を維持することが大切です。
まとめ:カジュアル面談を活用して理想の転職を実現しよう
カジュアル面談は、企業と求職者が相互理解を深める貴重な機会です。選考の合否を気にせず、リラックスした雰囲気で本音の対話ができるため、入社後のミスマッチを防ぐ重要な役割を果たします。
事前の準備から当日、面談後の対応まで、一つひとつを丁寧に行うことで、理想的な転職先を見つけられる可能性が高まります。企業研究、自己分析、質問の準備を怠らず、積極的に参加してみてください。
カジュアル面談を通じて得られる情報と経験は、転職活動の成功につながります。この機会を最大限活用して、後悔のない転職を実現しましょう。


キャリアアドバイザー、リクルーティングアドバイザー、社内人事などを経て、現在は転職メディア「転テン」の運営を担当。転職に悩む方の力になるべく、リアルな現場経験を活かしたノウハウを発信中。あなたの「キャリアづくり」を応援します。