この記事では、転職経験がない方に向けて、挑戦しやすい業界と職種を具体的に紹介します。未経験の業界・業種でも自信を持って一歩を踏み出せる情報をまとめました。
目次
企業が未経験者を積極採用する4つの理由

未経験者を採用する企業が増えている背景には、明確な理由があります。人材不足や事業戦略の変化があります。
ここでは、企業が未経験者を積極的に採用する4つの理由を見ていきましょう。
人手不足を解消するため
多くの業界で深刻な人手不足が続いています。少子高齢化の影響で若年労働人口が減少し、経験者だけに絞った採用では必要な人員を確保できなくなりました。
特にIT業界や建設業界、介護業界などでは、経験者の取り合いが激化しています。経済産業省の施策によると、26年度までに230万人のデジタル人材育成を目標設定しています。
このため、未経験者にも門戸を広げ、入社後に育成する方針に切り替える企業が増えました。
未経験者でも意欲があれば採用し、実務を通じて戦力化していく流れが増加しています。
参照:経済産業省「Society5.0時代のデジタル人材育成に関する検討会報告書」
若手のポテンシャルに投資するため
企業は将来を見据え、若手のポテンシャルに投資する姿勢を強めています。経験者を高い報酬で採用するよりも、未経験の若手を長期的に育成する方が、結果的にコストを抑えられます。
吸収力や柔軟性が高い若手は、企業文化にも馴染みやすく、将来の幹部候補として期待できます。新しい知識を積極的に学ぶ姿勢があれば、未経験でも十分に評価されるでしょう。
他業界の新しい視点を取り入れるため
異業種からの転職者は、業界に新しい風を吹き込む存在として注目されています。同じ業界内で長く働いていると、考え方が固定化しがちです。
しかし、異なる業界で培った経験や発想は、既存の枠組みにとらわれない斬新なアイデアを生み出します。
業界の常識に疑問を持ち、新しい提案ができる人材は、組織にとって貴重な戦力になります。
教育体制が整っており育成に自信があるため
未経験者を採用できる企業は、充実した教育体制を持っています。体系的な研修プログラムやOJT制度、マニュアルの整備により、未経験者でもスムーズに業務を習得できる環境が整いました。
メンター制度を導入し、先輩社員がマンツーマンでサポートする企業も増えています。独立行政法人労働政策研究・研修機構によると5割強の企業が採用後の育成は企業に責任があると回答しています。
このような体制から、企業が未経験者の採用を行うのでしょう。
参照:独立行政法人労働政策研究・研修機構「労働政策研究報告書No.195」
転職未経験でも挑戦しやすい業界6選

ここでは、未経験でも挑戦しやすい6つの業界を紹介します。それぞれの業界の特徴も解説していますので、転職を考える際の参考にしてください。
IT・Web業界|リモートワークで柔軟な働き方
IT・Web業界は慢性的な人材不足に悩んでおり、未経験者の採用に最も積極的な業界の一つです。
充実した研修制度を設けている企業が多く、プログラミング未経験でも基礎から学べる環境が整っています。リモートワークを導入している企業も多いため、働く場所や時間に柔軟性を持たせられるでしょう。
運輸・配送業界|需要拡大による積極採用
EC市場の拡大により、運輸・配送業界の需要は年々高まっています。経済産業省の調査によるとBtoC-EC市場規模は前年比5.1%増加しています。
宅配便の取扱個数は増加の一途をたどり、ドライバーや配送スタッフの需要が急増しました。
未経験歓迎の求人が多く、入社後に必要な運転免許の取得を支援する企業もあります。安定した収入を得られる点も魅力です。
参照:経済産業省「令和6年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」
製造業界|マニュアル完備で安心
製造業界は、明確な業務手順とマニュアルが整備されているため、未経験でも始めやすい環境です。
作業内容が標準化されており、先輩社員のサポートを受けながら着実にスキルを習得できます。
技術習得のための研修制度やOJTが整っており、未経験者でも安心してスタートできます。ものづくりに興味がある方にとって、やりがいを感じられる業界です。
介護・福祉業界|高い社会貢献度
高齢化社会の進展により、介護・福祉業界の需要は今後も安定して続きます。人手不足が深刻なため、未経験者を積極的に受け入れる体制が整っています。
資格取得支援制度を設けている企業が多く、働きながら介護職員初任者研修などの資格を取得できます。未経験からのキャリアパスも明確で、経験を積めば介護福祉士やケアマネージャーへのステップアップも可能です。
人の役に立つ仕事として、やりがいを実感しやすい業界といえます。
不動産業界|高収入を目指せる
不動産業界は、インセンティブ制度を導入している企業が多く、実力次第で高収入を目指せます。実績を上げればすぐに評価される実力主義の環境です。
充実した研修プログラムがあり、不動産の基礎知識から営業スキルまで体系的に学べます。宅地建物取引士の資格を取得すれば、さらにキャリアアップのスピードが加速します。
営業経験がある方は、そのスキルを活かしやすい業界です。
建設業界|インフラ需要による安定性
建設業界は、道路や橋梁などのインフラ維持・更新需要が安定しており、長期的な雇用が見込めます。また、再開発プロジェクトや災害復興工事など、継続的な仕事があります。
資格取得によるキャリアアップの道筋が明確で、施工管理技士や建築士などの資格を取得すれば、収入アップにつながります。
現場で実務経験を積みながら、専門性を高められる環境です。
転職未経験でも始めやすい職種7選

業界だけでなく、職種によっても転職のしやすさは変わります。ここでは、特別なスキルや経験がなくても挑戦しやすく、かつキャリアを築ける7つの職種を紹介します。
営業職|コミュニケーション力を活かせる
営業職は、前職での経験を活かしやすい職種です。業界が変わっても、顧客とのコミュニケーションや課題解決のプロセスは共通しています。
成果が数字で明確に現れるため、実力を証明しやすい環境です。インセンティブ制度を導入している企業が多く、頑張り次第で高収入を得られるでしょう。
事務職|基本的なPCスキルで始められる
事務職は、基本的なPCスキル(Word、Excel、PowerPoint)があれば始められる場合がほとんどです。
業務内容が定型化されており、マニュアルに沿って作業を進められるため、未経験でも取り組みやすい職種です。
業務を通じてExcelの関数やマクロなど、実務的なスキルを習得できるため、着実にスキルアップしていけます。
コールセンター|マニュアルがしっかりしている
コールセンターは、応対マニュアルやトークスクリプトが整備されており、未経験でも安心してスタートできます。研修期間が充実している企業も多く、実際の業務に入る前に十分な練習ができるでしょう。
シフト制を採用している企業もあり、自分のライフスタイルに合わせた働き方が可能です。電話応対のスキルやクレーム対応力など、どの業界でも役立つビジネススキルが身につきます。
販売職|接客経験を活かせる
販売職は、人と接することが好きな方に向いています。接客経験があれば、そのスキルを十分に活かせるでしょう。
商品知識を深めることで、顧客により良い提案ができるようになり、やりがいを感じられます。未経験歓迎の求人が多く、アパレル、家電、化粧品など、さまざまな業界で募集があります。
ITエンジニア|需要が高く将来性抜群
ITエンジニアは、プログラミングスキルを持っている場合は未経験からでも転職できます。プログラミング未経験の場合は未経験者向けの研修制度を備えている企業を選びましょう。
リモートワークを導入している企業が多く、場所にとらわれない働き方が可能です。スキルを磨けば高収入を目指せる職種で、将来的にフリーランスとして独立する道もあります。
IT人材の需要は今後も高まり続けるため、長期的に安定したキャリアを築けます。
介護職|資格取得支援が充実
介護職は、働きながら資格を取得できる環境が整っています。介護職員初任者研修から始め、実務経験を積みながら介護福祉士やケアマネージャーへとステップアップできます。
高齢化社会により需要が安定しており、求人が途絶えることはないでしょう。人の役に立つ仕事として、社会貢献度の高さを実感できます。
厚生労働省が紹介しているように、支援制度も十分にあり未経験でもチャレンジしやすい環境となっています。
工場スタッフ|作業手順が明確
工場スタッフは、作業手順がマニュアル化されており、未経験でも取り組みやすい職種です。黙々と作業に取り組めるため、コミュニケーションが苦手な方でも働きやすい環境といえるでしょう。
トヨタやパナソニックなどの大手企業の求人も多く、福利厚生が充実している点も魅力です。正社員登用制度を設けている企業も多く、長期的なキャリア形成も可能です。
転職の経験がない人がやるべき5つの準備

転職を成功させるには、入念な準備が欠かせません。ここでは、転職活動をスムーズに進めるための以下の5つの準備を紹介します。
転職活動の5つの準備
- 経験とスキルの棚卸しをする
- 業界研究と企業研究を徹底する
- 転職の目的と条件を明確にする
- 面接対策を入念に行う
- 応募書類を完璧に仕上げる
特に転職経験がない場合、何から始めればいいか分からず不安を感じるかもしれません。解説を参考に今日から始められる準備に手を付けてみてください。
経験とスキルの棚卸しをする
まず、これまでのキャリアを振り返り、自分の経験とスキルを整理しましょう。日々の業務で当たり前にやっていたことが、実は貴重なスキルである場合も多くあります。
業務内容を具体的に書き出し、どのようなスキルを使っていたかリストアップします。成果や実績は数値で示すと説得力が増します。
強みだけでなく弱みも明確にし、転職先で克服したい点として前向きに伝えられるよう準備しましょう。
業界研究と企業研究を徹底する
志望する業界の動向を把握し、成長性や課題を理解することが重要です。業界紙やニュースサイト、業界団体の発表資料などを確認し、最新情報を収集しましょう。
企業研究では、事業内容だけでなく、経営理念や企業文化、社風まで深く調べます。競合他社と比較することで、その企業の強みや特徴が見えてきます。
実際に働いている人の声を口コミサイトで確認する場合は、情報の偏りに注意が必要です。
転職の目的と条件を明確にする
転職理由と目的を言語化することで、軸がぶれない転職活動ができます。収入アップ、ワークライフバランス、キャリアアップなど、目的を具体的に整理しましょう。
転職先に求める条件をリストアップし、「絶対に譲れない条件」と「できれば叶えたい条件」に分けて優先順位をつけます。企業選びの基準にするため、優先順位を明確にすることが重要です。
10年後のキャリアプランも描いておくと、面接で将来のビジョンを語る際に役立ちます。
面接対策を入念に行う
面接では、転職理由や志望動機、自己PRなど、よく聞かれる質問への回答を準備しましょう。曖昧な受け答えや不明瞭な回答は、企業にマイナスの印象を与えます。
想定質問をリストアップし、回答を声に出して練習することで、本番で自然に話せるようになります。模擬面接を第三者に依頼し、客観的なフィードバックをもらうこともおすすめです。
企業ごとに志望動機をカスタマイズし、その企業でなければならない理由を明確に伝えられるよう準備しましょう。
応募書類を完璧に仕上げる
履歴書と職務経歴書は、企業が最初に目にする重要な書類です。職務経歴書では、これまでの業務内容を具体的に記載し、どのような成果を上げたかを明確に示します。
自己PRでは、志望企業で活かせる強みを中心に書きます。誤字脱字は致命的なミスになるため、何度も見直しましょう。
可能であれば、転職エージェントや信頼できる第三者に添削を依頼すると、より完成度の高い書類に仕上がります。
【年代別】転職未経験から転職を成功させるコツ

転職市場では、年代によって企業が求める要素が異なります。年代ごとに以下の表のようなアピールポイントを意識しましょう。
年代 | アピールポイント |
20代 | ポテンシャル |
30代 | 即戦力性 |
40代 | 経験と人脈 |
ここでは、年代別に転職を成功させるコツを解説します。
20代の転職成功のコツ|ポテンシャルをアピール
20代は「第二新卒」として扱われるケースも多く、未経験者に最も門戸が開かれている年代です。企業は即戦力よりも、成長意欲や柔軟性を重視します。
「新しいことを学ぶ意欲」「変化に対応できる柔軟性」を具体的なエピソードで示しましょう。前職で新しい業務に挑戦した経験や、自主的に学習した内容などがおすすめです。
第二新卒向けの求人サイトやエージェントを活用すると、未経験者を積極採用している企業と出会いやすくなります。
長期的な成長性をアピールし、10年後にどのような人材になりたいかを語れるようにしておきましょう。
30代の転職成功のコツ|即戦力性を前面に
30代になると、企業は即戦力としての貢献を期待します。未経験の業界や職種に挑戦する場合でも、これまでのスキルをどう活かせるかを明確に示す必要があります。
専門スキルを具体的に提示し、志望企業でどのように活用できるかを説明しましょう。マネジメント経験があれば、チームをまとめた実績や後輩育成の経験を強調します。
業界知識の深さをアピールし、即戦力として貢献できることを伝えます。実績は数値で示し、具体的な成果を語りましょう。
40代の転職成功のコツ|経験と人脈を武器に
厚生労働省の調査によると40代の転職入職率は、20代や30代と比べて低い数値となっています。しかし、豊富な業務経験とネットワークは、大きな武器になります。
これまで培ってきた専門性を前面に出し、その分野でのエキスパートであることを示しましょう。リーダーシップの実績を具体的に語り、組織をまとめた経験やプロジェクトを成功に導いた実績をアピールします。
40代の転職では、同業種での転職を優先することで成功率が高まります。異業種への転職を目指す場合は、これまでの経験がどう活きるかを丁寧に説明する必要があります。
転職の経験がなくても取得すると有利な資格5選

転職活動において、資格は「知識やスキルの証明」としておすすめです。特に未経験の業界や職種に挑戦する場合、以下のような資格があることで説得力が増すでしょう。
資格 | おすすめの業界・業種 |
基本情報技術者 | IT業界 |
日商簿記2級 | 事務職 |
MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト) | 事務職、その他 |
宅地建物取引士 | 不動産業界 |
介護職員初任者研修 | 介護業界 |
ここでは、転職に役立つ5つの資格を紹介します。
基本情報技術者|IT業界への転職に
基本情報技術者試験は、ITに関する基礎知識を体系的に証明できる国家資格です。プログラミングやデータベース、ネットワークなど、IT業界で必要な幅広い知識をカバーしています。
IT系の知識やスキルがある場合は難易度はそれほど高くないですが、未経験の場合は難しく感じることがあります。ITパスポート試験を取得後に挑戦することの検討もおすすめです。
独学で取得することも可能ですが、専門学校や大学で学ぶことも可能です。
日商簿記2級|事務職への転職に
日商簿記2級は、経理や財務の基礎知識を証明する資格で、事務職への転職に有利です。経理部門だけでなく、営業や企画部門でも役立つでしょう。
汎用性が高く、業界を問わず評価される資格です。簿記3級と比べて難易度は上がりますが、公認会計士や税理士、ファイナンシャルプランナーなど他の資格取得に役立つ知識も得られます。
通信講座やオンライン学習も充実しており、働きながらでも取得しやすい環境が整っています。
MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)|事務職全般に
MOSは、Word、Excel、PowerPointなどのOfficeスキルを客観的に証明できる国際的な資格です。事務職では、これらのソフトを日常的に使用するため、スキルの証明として有効です。
MOS資格は各Office製品に特化した試験があり、複数のバージョンや難易度があります。比較的短期間で取得でき、費用も抑えられるため、転職活動の準備として取り組みやすい資格です。
宅地建物取引士|不動産業界への転職に
宅地建物取引士(宅建士)は、不動産業界では需要の高い国家資格です。不動産の売買や賃貸契約において、重要事項の説明など、宅建士にしかできない業務があります。
この資格を持っていることで、不動産業界への転職が大きく有利になります。合格率は15〜17%程度と難関ですが、取得すればキャリアアップにも直結します。
介護職員初任者研修|介護業界への転職に
介護職員初任者研修は、介護の基礎を学べる入門資格です。介護業界で働くための最初のステップとして位置づけられています。
約1〜4ヶ月の研修で取得でき、働きながらでも無理なく学習できます。資格支援制度を設けている企業や自治体もあります。
この資格を取得することで、介護職として基本的な知識とスキルを持っていることを証明できます。
まとめ|転職未経験でも自信を持って転職活動を始めよう
転職において経験がないことは、決して不利ではありません。重要なのは、自分の強みを理解し、それを志望企業でどう活かせるかを明確に伝えることです。
未経験者が挑戦しやすい業界は数多くあります。スキルや経験がなくても始められる職種も豊富です。入念な準備と対策を行えば、未経験でも十分に成功できます。
年代に応じた戦略を立て、必要であれば資格取得も検討しましょう。転職エージェントを活用すれば、プロのサポートを受けながら効率的に転職活動を進められます。
まずは一歩を踏み出し、新しいキャリアへの挑戦を始めてみてください。


キャリアアドバイザー、リクルーティングアドバイザー、社内人事などを経て、現在は転職メディア「転テン」の運営を担当。転職に悩む方の力になるべく、リアルな現場経験を活かしたノウハウを発信中。あなたの「キャリアづくり」を応援します。