この記事では、転職を検討している20代後半から30代の方に向けて、退職金の仕組みから実際の相場、税金の計算方法まで、転職前に知っておくべき情報を解説します。
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目次
まず確認|転職時に退職金は支払われるか

転職を決意する前に、まず確認すべきは「そもそも退職金がもらえるのか」という基本的な部分です。ここでは以下のポイントを解説します。
- 退職金は法律上の義務ではない
- 勤務先に退職金制度があるかを確認する
- 最低勤続年数の条件を確認する
- 自己都合退職でも支給対象になるか確認する
勤続年数や退職理由によって支給の有無が変わることもあるため、就業規則を詳しくチェックする必要があります。
退職金は法律上の義務ではない
退職金の支給は、実は法律で義務付けられているものではありません。労働基準法には退職金に関する規定がなく、企業が任意で設ける福利厚生制度という位置づけになっています。
厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」によると、退職金制度がある企業の割合は全体で約75%となっています。つまり、4社に1社は退職金制度そのものが存在しないということです。
退職金制度の有無は企業規模によって大きく異なり、従業員1,000人以上の大企業では約90%が制度を設けているのに対し、30~99人の企業では約70%にとどまります。
転職先を選ぶ際は、退職金制度の有無だけでなく、総合的な待遇を比較することが大切です。
勤務先に退職金制度があるかを確認する
自分の会社に退職金制度があるかどうかは、就業規則を確認すれば分かります。就業規則は労働基準法により、従業員がいつでも閲覧できる状態にすることが義務付けられています。
もし就業規則に退職金の記載がない場合でも、慣例として支給されているケースもあります。同僚や先輩社員に確認したり、人事部に問い合わせたりして、実態を把握することが重要です。
最低勤続年数の条件を確認する
退職金制度があっても、すぐにもらえるわけではありません。厚生労働省の発表している調査結果によると最低勤続年数を3年以上に設定している企業は過半数以上です。
中小企業退職金共済(中退共)に加入している企業の場合、勤続1年から退職金が支給されるケースもあり、比較的短期間でも退職金を受け取れる可能性があります。
転職のタイミングを検討する際は、あと数ヶ月で支給要件を満たすかどうかも考慮に入れましょう。
自己都合退職でも支給対象になるか確認する
転職による退職は基本的に「自己都合退職」となり、会社都合退職と比べて退職金が減額されたり、支給対象にならなかったりする場合もあります。
自己都合退職と会社都合退職の違いは、退職金の金額だけでなく、失業給付の受給開始時期です。自己都合退職の場合、失業給付を受け取るまでに2~3ヶ月の待機期間が発生します。
ただし、パワハラやセクハラ、長時間労働などが原因で退職する場合は、自己都合退職でも会社都合退職と同等の扱いを受けられるでしょう。労働基準監督署やハローワークに相談することで、適切な判断を受けられます。
会社でよく採用されている退職金制度とは

退職金制度には大きく分けて4つの種類があり、それぞれ特徴や受け取り方が異なります。ここでは以下の退職金制度を紹介します。
- 退職一時金制度
- 確定給付企業年金(DB)
- 確定拠出年金(DC)
- 退職金共済制度
自分の会社がどの制度を採用しているかによって、退職金の計算方法や受取時期が変わってきます。
退職一時金制度
退職一時金制度は、最も基本的な退職金制度で、退職時に一括で支給される仕組みです。企業が退職金の原資を内部留保として積み立て、従業員の退職時に支払います。
計算方法は主に3つのパターンがあります。最も多いのが「基本給連動型」で、退職時の基本給に勤続年数と支給率を掛けて算出します。
退職一時金制度のメリットは、退職時にまとまった金額を受け取れることです。一方で、企業の業績悪化により退職金が減額されるリスクもあります。
確定給付企業年金(DB)
確定給付企業年金(DB:Defined Benefit)は、企業が従業員に約束した給付額を保証する制度です。企業が外部の信託銀行や生命保険会社に資金を積み立て、運用を委託します。
DBの特徴は、運用リスクを企業が負うことです。運用成績が悪くても、企業は約束した金額を支払う義務があるため、従業員にとっては安心感のある制度といえます。
転職時には、DBの積立金を一時金で受け取るか、転職先の企業年金に移管するかを選択できます。ただし、勤続年数が短い場合は一時金での受け取りしか選択できないこともあります。
確定拠出年金(DC)
確定拠出年金(DC:Defined Contribution)は、企業が掛金を拠出し、従業員が自分で運用する制度です。運用成績によって将来受け取る金額が変動するため、自己責任の要素が強い制度といえます。
企業型DCの掛金は、月額5,000円から55,000円の範囲で企業が決定します。従業員は提示された金融商品の中から選択し、自分で運用方針を決める必要があります。
DCの最大のメリットは、転職時に積立金を持ち運べる「ポータビリティ」です。転職先に企業型DCがあれば移管でき、なければ個人型確定拠出年金(iDeCo)に移管できます。
運用商品は主に定期預金、投資信託、保険商品から選択することが多いでしょう。若い世代ほどリスクを取った運用ができるため、株式型投資信託を中心に運用する人が増えています。
退職金共済制度
退職金共済制度は、中小企業向けの外部積立型の退職金制度です。代表的なものに中小企業退職金共済(中退共)と特定退職金共済(特退共)があります。
中退共の場合、掛金は月額5,000円から30,000円の範囲で企業が決定し、全額企業負担となります。従業員が直接中退共から退職金を受け取るため、企業が倒産しても退職金は保護されます。
| 共済制度 | 対象企業 | 掛金月額 | 最低加入期間 |
| 中退共 | 中小企業 | 5,000~30,000円 | 1年 |
| 特退共 | 全企業 | 1,000~30,000円 | 1年 |
| 建退共 | 建設業 | 日額310円~ | 1年 |
中退共の「退職金試算」サイトでは、掛金と加入期間を入力すれば、退職金の見込み額をシミュレーションできます。転職を検討している人は、事前に確認しておくと良いでしょう。
参照:「退職金のシミュレーション」独立行政法人勤労者退職金共済機構
退職金はいくらが普通?一般的な目安を紹介

退職金の相場は企業規模、勤続年数、退職理由によって大きく異なります。転職を考える際は、自分の条件でどの程度の退職金が見込めるかを把握しておくことが重要です。
ここでは、厚生労働省や東京都産業労働局の最新データを基に、転職者が気になる勤続年数別の退職金相場を詳しく解説します。
大企業と中小企業での退職金の目安
大企業と中小企業では、退職金の金額に2倍以上の差があることが珍しくありません。大卒で定年退職した場合の平均退職金は、大企業で約2,400万円、中小企業で約1,100万円となっています。
勤続年数が短い転職者の場合でも、この格差は明確に表れます。勤続5年の自己都合退職では、大企業で約60万円、中小企業で約47万円と差がつくことが一般的です。
この差は、退職金の計算方法や支給率の違いによるものです。大企業では基本給も高く、支給率も手厚く設定されていることが多いため、勤続年数が増えるほど差が広がっていきます。
参照:「退職金の平均・相場は?勤続年数・企業規模・業種・学歴別に紹介」三井住友銀行
勤続年数が短い場合の退職金の目安
転職者の多くが気にする「勤続3年から5年での退職金」は、想像以上に少ないのが実態です。特に自己都合退職の場合、支給率が減額されることもあるため、手取り額はさらに少なくなります。
勤続3年での退職金は、大企業でも20~35万円程度が相場です。月給30万円の人が3年働いても、退職金は給料1ヶ月分程度ということになります。
勤続年数が3年未満の場合、退職金を支給しない企業も少なくありません。東京都の産業労働局が発表している調査結果によると自己都合退職の場合、約47%の企業が退職一時金を受給する最低勤続年数は3年と回答しています。
勤続5年になると、退職金は若干増えますが、それでも大企業で50万円、中小企業で25万円程度です。この金額では、転職活動中の生活費として心もとないため、別途貯金を準備しておく必要があります。
「退職金の平均・相場は?勤続年数・企業規模・業種・学歴別に紹介」三井住友銀行
勤続10年以上の場合の退職金の目安
勤続10年を超えると、退職金の増加カーブが急になります。これは多くの企業で、勤続10年を境に支給率が大幅に上がる制度となっているためです。
大企業の場合、勤続10年で約280万円、15年で約520万円、20年で約950万円と、5年ごとに大きく増加していくことも少なくありません。中小企業でも同様の傾向があり、勤続10年から15年を超えると退職金の恩恵を実感できるようになります。
参照:「退職金の平均・相場は?勤続年数・企業規模・業種・学歴別に紹介」三井住友銀行
転職する場合の退職金の目安
転職を繰り返すと、退職金の面では不利になることが多いです。勤続年数がリセットされるため、同じ会社に長く勤めた場合と比べて、生涯で受け取る退職金の総額は当然少なくなります。
転職による退職金の損失を補うには、年収アップが必須です。年収が100万円上がれば、10年で1,000万円の差になるため、退職金の減少分を年収で補えます。
最近では、毎月の給与に退職金相当額を上乗せする退職金の前払い制度を導入する企業も増えています。転職を繰り返す場合はこの制度の有無を確認することもおすすめです。
転職前に必ずやるべき退職金制度のチェックポイント

転職を決断する前に、現職の退職金制度を詳しく確認することは必須です。以下の項目を確認しましょう。
- 就業規則・退職金規程
- 企業年金(DB・DC)の有無
- 退職金の支給時期
これらを確認せずに退職すると、想定外の損失を被る可能性があります。
就業規則・退職金規程
就業規則の中でも特に重要なのが「退職金規程」です。ここには退職金の計算方法、支給要件、減額事由などが詳細に記載されています。
退職金規程で最初に確認すべきは、自分が適用される計算式です。「基本給×勤続年数×支給率」という計算式が一般的ですが、企業によって係数が異なります。以下の内容を確認しましょう。
| 確認項目 | チェックポイント |
| 計算方法 | 基本給連動型かポイント制か |
| 支給率 | 自己都合の減額率 |
| 勤続年数 | 端数月の扱い |
| 除外規定 | 懲戒解雇時の扱い |
競業避止義務違反や機密漏洩などの場合、退職金が不支給になることもあります。転職先が同業他社の場合は、特に注意が必要です。
企業年金(DB・DC)の有無
企業年金がある場合、退職一時金とは別に年金資産を受け取れます。DBとDCでは手続きが異なるため、事前に確認しておく必要があります。
DBの場合、脱退一時金として受け取るか、通算企業年金として将来受け取るかを選択できます。勤続年数が短い場合は脱退一時金しか選択できないことが多いでしょう。
DCの場合、退職後6ヶ月以内に移管手続きをしないと、自動的に国民年金基金連合会に移管され、手数料が発生します。早めの手続きが重要です。
企業型DCの残高は、運営管理機関のWebサイトで確認できます。現在の評価額と運用商品の内訳を確認し、転職後の運用方針を検討しておきましょう。
退職金の支給時期
退職金の支給時期は企業によって異なり、退職日から1~3ヶ月後が一般的です。転職先の入社日までに受け取れない場合もあるため、資金計画を立てる際は注意が必要です。
多くの企業では、退職日の翌月末か翌々月末に支給されます。ただし、退職金の計算や承認手続きに時間がかかる場合は、3ヶ月以上かかることもあります。
退職金の支給が遅れる場合に備えて、3ヶ月分程度の生活費は確保しておくことをお勧めします。
退職金を受け取るときの税制と控除の考え方

退職金には税金がかかりますが、給与所得とは異なる優遇税制が適用されます。退職所得控除という大きな控除があるため、実際の税負担は想像以上に軽くなります。
ここでは、退職金にかかる税金の仕組みと、手取り額の計算方法を具体例を交えて解説します。
退職金は退職所得として分離課税される
退職金は「退職所得」として、他の所得とは分離して課税されます。これは退職金が長年の勤労に対する報償的な性格を持つため、税制上優遇されているためです。
分離課税のメリットは、高額な退職金を受け取っても、その年の所得税率が跳ね上がらないことです。給与所得と合算されないため、累進課税の影響を受けません。
退職所得の税率は、課税所得に応じて5%から45%まで段階的に上がりますが、退職所得控除と1/2課税により、実効税率は大幅に下がります。
退職所得控除で税負担が軽くなる
退職所得控除は、勤続年数に応じて自動的に計算される控除額です。勤続20年までは1年につき40万円、20年を超える部分は1年につき70万円が控除されます。
勤続年数が5年の場合、退職所得控除は200万円(40万円×5年)となり、退職金が200万円以下なら税金はかかりません。
この控除を受けるには、「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出する必要があります。提出しないと一律20.42%の源泉徴収をされ、確定申告で還付を受ける必要があります。
詳しくは国税庁のサイトから確認することができます。
参照:「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」国税庁
控除後の金額にだけ税金がかかる
退職所得控除を差し引いた後の金額の、さらに1/2だけが課税対象となります。これを「1/2課税」といい、退職金の税制優遇の大きな特徴です。
例えば、勤続15年で退職金800万円を受け取った場合の計算は以下のようになります。
| (例)勤続15年で退職金800万円退職所得控除:600万円(40万円×15年)課税退職所得:(800万円-600万円)×1/2=100万円 |
課税退職所得100万円に対する所得税は約5万円、住民税は約10万円で、手取りは785万円程度になります。800万円の退職金に対して、実質的な税率は2%未満です。
ただし、勤続年数5年以下の役員等については、1/2課税が適用されない場合があります。短期間で高額な退職金を受け取る場合は、税理士に相談することをお勧めします。
よくある不安を解消|転職者の退職金Q&A

ここでは、退職金に関する疑問や不安に対して、具体的な回答をまとめました。
転職先を判断する材料として参考になれば幸いです。
勤続3年未満でも退職金はもらえる?
勤続3年未満での退職金支給は、企業の退職金規程によって大きく異なります。一般的には支給されないケースが多いですが、例外もあります。
中小企業退職金共済(中退共)に加入している企業では、勤続1年から退職金が支給されます。ただし、掛金納付月数が12ヶ月未満の場合は支給されません。
IT企業やベンチャー企業では、退職金制度の代わりに確定拠出年金(DC)を導入しているケースが増えており、この場合は勤続期間に関わらず積立金を受け取れます。
転職すると退職金は損になる?
転職による退職金の損得は、転職後の年収アップ幅と比較して判断する必要があります。確かに勤続年数のリセットにより退職金は減りますが、年収が上がれば十分にカバーできます。
重要なのは「退職金だけ」で判断しないことです。基本給、賞与、福利厚生、そして将来のキャリアパスを総合的に評価しましょう。
また、最近では退職金前払い制度を導入する企業も増えています。月給に退職金相当額を上乗せする制度で、転職者にとっては有利な選択肢となります。
退職金がない会社は避けるべき?
退職金制度がない会社が必ずしも悪い会社というわけではありません。特にIT企業や外資系企業では、退職金制度の代わりに高い年収を提示することもあります。
退職金なしでも、例えば以下の条件などを満たす企業なら検討する価値があります。
- 基本給が同業他社より20%以上高い
- 確定拠出年金の会社負担が手厚い
- ストックオプションなどのインセンティブがある
大切なのは、生涯賃金全体で比較することです。退職金1,000万円よりも、30年間で年収50万円高い方が、トータルでは有利になります。
退職金に税金はかかる?
退職金には税金がかかりますが、退職所得控除により大幅に軽減されます。勤続年数×40万円(20年超は×70万円)までは非課税となるため、多くの転職者は税金をほとんど払いません。
注意すべきは「退職所得の受給に関する申告書」の提出です。これを出さないと20.42%が源泉徴収され、後で確定申告が必要になります。
退職金の税金計算は複雑に見えますが、心配な場合は事前に手取り額を確認しておくと安心です。
まとめ|後悔しない転職のために退職金の制度は確認しておこう
転職を考える際、退職金は重要な判断材料の一つですが、それだけで決めるべきではありません。現職の退職金制度を正確に把握し、転職後の総合的な待遇と比較することが大切です。
まず確認すべきは、自分が退職金の支給対象になるかどうかです。自己都合退職による減額率も含めて、実際の手取り額を計算しておきましょう。
退職金の金額は企業規模によって大きく異なります。ただし、退職金が少ない、あるいはない企業でも、年収が高ければ生涯賃金では有利になることもあります。退職金、基本給、賞与、福利厚生を総合的に評価することが重要です。
転職は人生の大きな決断ですが、退職金制度を含めた情報を整理し、冷静に判断することで、後悔のない選択ができるはずです。

キャリアアドバイザー、リクルーティングアドバイザー、社内人事などを経て、現在は転職メディア「転テン」の運営を担当。転職に悩む方の力になるべく、リアルな現場経験を活かしたノウハウを発信中。あなたの「キャリアづくり」を応援します。
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