採用面接は就職活動の最大の山場です。どんなに素晴らしい経験や資格があっても、面接でのちょっとした行動が採用結果を左右することがあります。
本記事では、採用担当者が実際に見ている面接でのNG行動とその対策について、人事経験者の視点から詳しく解説します。これから面接に臨む方は、ぜひ参考にしてください。
目次
面接の基本と成功のポイント

面接は単なる質疑応答ではなく、あなたの人柄や仕事への姿勢、コミュニケーション能力を総合的に評価する場です。面接官はあなたの言葉だけでなく、表情や姿勢、声のトーンなど多角的な視点から採用の判断を行っています。
成功するためには、評価される要素を正しく理解し、自分の強みを効果的に伝える準備が必要です。また、面接官の視点に立って考えることで、より的確な対応ができるようになります。
面接での評価ポイントを理解し、面接官の心理を把握することが、面接成功の第一歩です。以下では面接で評価される重要な要素と面接官の心理について詳しく見ていきましょう。
面接で評価される3つの重要な要素
面接において最も重視されるのは以下の3点です。
- コミュニケーション能力
- 入社への熱意
- ビジネスマナー
コミュニケーション能力は「話す内容」と「話し方」の両面から評価されます。論理的に考えを伝えられるか、適切な言葉遣いができるか、相手の質問を正確に理解しているかなどが重要です。
入社への熱意は志望動機の一貫性と企業研究の深さで判断されることが多いです。なぜその業界なのか、なぜその企業なのか、自分のキャリアプランとどう結びつくのかを明確に説明できることが求められます。
単なる「御社に興味があります」という言葉だけでは熱意は伝わりません。
ビジネスマナーは社会人としての基本がしっかりしているかを示す重要な評価ポイントです。挨拶、身だしなみ、時間管理、敬語の使い方などが含まれます。これらは入社後のビジネスパーソンとしての基本的な素養と捉えられるため、疎かにはできません。
1971年にカリフォルニア大学の心理学者であるアルバート・メラビアンが提唱した“メラビアンの法則”によると、見た目や仕草といった視覚情報と声の大きさや口調といった聴覚情報で、人間は印象の9割を決定づける、とされています。
最初の数分で好印象を与えることが、その後の面接を有利に進める鍵となるのです。
面接官の心理と評価基準を理解する
面接官が最も重視しているのは「この人と一緒に働きたいか」という点です。専門知識やスキルも重要ですが、チームの一員として協働できるかどうかが採用の大きな判断材料になります。そのため、コミュニケーション能力や協調性、前向きな姿勢などが高く評価されます。
面接官は短時間で応募者を見極めるために、非言語コミュニケーションを特に注視しています。言葉で伝える内容だけでなく、表情、姿勢、声のトーン、目線の配り方など、無意識に表れる態度から本質を読み取ろうとしています。これらは嘘をつきにくい要素でもあるため、重要な判断材料となっています。
また、業界や企業規模によって評価基準には違いがあります。例えば、ベンチャー企業では主体性や柔軟性が重視され、大手企業では協調性や安定性が評価されることが多いです。志望する企業の文化や求める人材像をリサーチしておくことが必要です。
面接官の質問には必ず意図があり、その背景を理解することが重要です。「長所と短所を教えてください」という質問は単に性格を知りたいのではなく、自己分析ができているか、短所を克服する努力をしているかを見ています。
質問の真の意図を考えながら回答することで、より的確な受け答えができるようになるでしょう。
【面接前】第一印象を損なうNG行動と対策

面接の成否は面接室に入る前から始まっています。第一印象は一度ついてしまうと覆すのが難しく、面接全体の評価に大きく影響します。
ここでは、面接前の段階で陥りやすいNG行動とその対策について解説します。
時間管理に関するNG行動
面接における時間管理は、あなたの仕事への取り組み姿勢を示します。遅刻は論外ですが、30分以上早く到着するのも企業側に迷惑をかける可能性があります。早すぎる到着は、時間管理能力の不足や空気を読めない印象を与えかねません。
交通機関の遅延も考慮した余裕ある計画が必要です。当日は普段よりも混雑している可能性や、道に迷うことも想定して、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。特に初めて訪れる場所であれば、事前に経路を確認しておくことが重要です。
適切な到着時間は面接開始10〜15分前が理想的です。この時間帯であれば、受付での手続きや身だしなみの最終チェックをする余裕があり、かつ企業側に負担をかけることもありません。
早く着きすぎてしまった場合は、近くのカフェなどで時間調整をするとよいでしょう。その時間を使って、志望動機や自己PRの最終確認をするのも効果的です。時間の使い方一つで、プロフェッショナルとしての意識が伝わります。
待機中のNG行動と正しい過ごし方
待合室での過ごし方も採用担当者は見ています。待機中にスマホを操作し続けることは、企業への関心の低さと判断される可能性があります。特にSNSやゲームをしている姿を見られると、集中力や意欲に疑問を持たれかねません。
姿勢が悪い、脚を組む、大きな声で話すなどの行動も評価を下げる要因となります。これらは社会人としての基本的なマナーの欠如と見なされ、職場での振る舞いも同様だろうと判断されてしまいます。
待機時間は応募書類や企業資料の最終確認に充てるべきです。面接で話す内容を頭の中で整理したり、企業の最新情報をチェックしたりすることで、面接への意欲が伝わります。また、落ち着いた様子で待機することで、精神的な安定感も示せます。
受付や案内スタッフへの対応も評価対象になっていることを忘れないでください。彼らからの情報も人事部に伝わることがあります。誰に対しても丁寧な対応を心がけ、良い印象を残すよう意識しましょう。
身だしなみの失敗と清潔感の作り方
清潔感のない服装や髪型は即不採用の原因になりうる重大なNG行動です。しわだらけのスーツ、整っていない髪型、汚れた靴などは、仕事に対する姿勢の甘さを示すサインと捉えられます。第一印象で「だらしない人」というレッテルを貼られると、挽回は困難です。
業界に合わせた適切な服装選びが重要です。金融や商社など保守的な業界では正統派のリクルートスーツが望ましく、クリエイティブ系ではやや柔軟な服装が許容される場合もあります。しかし、面接では基本的に清潔感のあるフォーマルな服装が無難です。
アクセサリーや香水は控えめに、髪色や爪も清潔感を意識しましょう。派手なネイルや奇抜な髪色は、特に顧客と接する職種では不適切と判断されることがあります。自己表現も大切ですが、ビジネスの場における適切さを優先すべきです。
面接前に全身鏡でチェックする習慣をつけましょう。襟元や袖口の汚れ、ボタンのかけ忘れ、ネクタイの曲がりなど、細部まで確認することが大切です。清潔感ある身だしなみは、自己管理能力の高さを示す重要な要素です。
面接直前の準備不足によるNG行動
企業研究不足は質問への回答で必ず露呈します。「なぜ当社を志望するのか」「当社の事業について知っていることは」といった質問に対して具体的に答えられないと、熱意の欠如と判断されてしまいます。企業のウェブサイトだけでなく、ニュースや業界動向も調査しておくことが重要です。
自己分析が甘いと一貫性のない回答になりがちです。「あなたの強みは何ですか」「これまでの経験で最も苦労したことは」といった質問に対して、その場しのぎの回答をしてしまうと、自分自身を理解していないという印象を与えます。
事前に自己分析を十分に行い、一貫性のある回答ができるようにしましょう。
面接直前の確認事項リストを作成しておくことも重要です。持ち物チェック、身だしなみ確認、志望動機の要点確認など、リストに基づいて最終チェックを行うことで、不安や緊張を軽減できます。
また、面接会場の場所や交通手段なども再確認しておくとよいでしょう。
準備不足は「熱意の欠如」と捉えられる最大のNG行動です。
どんなに優秀な人材でも、準備不足による誠意の欠如は致命的です。面接は相手の時間を頂いているという認識を持ち、最大限の準備をして臨むことが成功への近道です。
【面接中】評価を下げる致命的なNG行動と改善法

面接本番で陥りやすいNG行動は、意外にも基本的なことが多いものです。ここでは、面接中の致命的なNG行動とその改善法について詳しく解説します。
コミュニケーションに関するNG行動
面接官の目を見て話さないことは信頼性の欠如と判断される重大なNG行動です。目線を合わせることは誠実さや自信の表れとして評価されます。
しかし、ずっと見つめ続けると威圧感を与えるため、7割程度目を見て、時々視線を外すのが理想的です。緊張で目を合わせるのが難しい場合は、相手の眉間や鼻あたりを見るテクニックも効果的です。
声が小さすぎる、一方的に話す、敬語が使えないといった基本的なミスも評価を下げます。特に声の大きさは自信の表れと見なされるため、クリアで聞き取りやすい声量を意識しましょう。また、一方的に話し続けると、聞く力の欠如を示すことになります。相手の反応を見ながら、適切な間を取ることが重要です。
質問の意図を理解せず的外れな回答をする危険性もあります。質問の本当の意図を考え、それに沿った回答を心がけましょう。不明点があれば、「〇〇についてお聞きになりたいということでしょうか」と確認することも大切です。的確な質問理解は論理的思考力の証明にもなります。
適切な目線の配り方と聞き取りやすい声量を意識する方法としては、日頃から友人や家族との会話で練習することが効果的です。また、面接前に声出し練習をし、適切な声量を確認しておくとよいでしょう。コミュニケーションスキルは日々の積み重ねで向上します。
姿勢・態度に関するNG行動
だらしない姿勢は仕事への取り組み姿勢の甘さと判断される大きな減点要素です。背中が丸まっている、椅子に深く腰掛けているなどの姿勢は、やる気や集中力の欠如と捉えられます。背筋を伸ばし、椅子の3分の2程度に腰掛けるのが理想的な姿勢です。長時間の面接でも姿勢を保てるよう、日頃から意識することが大切です。
腕組み、足組みなどの閉じた姿勢は警戒心の表れと受け取られることがあります。これらは無意識に行っていることが多いため、自分の癖を把握し、意識的に開いた姿勢を保つ努力が必要です。両手を軽く膝の上に置き、両足を床につけるのが基本姿勢です。
落ち着きのない仕草(指先をいじる、髪をさわるなど)にも注意が必要です。これらは緊張や不安の表れとして、自信のなさを印象づけてしまいます。特に面接では緊張するものですが、深呼吸をするなど、リラックスする方法を見つけておくとよいでしょう。
適切な姿勢の保ち方と自然な振る舞いを身につけるには、鏡の前での練習や模擬面接が効果的です。また、姿勢が良いと声も出しやすくなり、自信も感じやすくなるという好循環が生まれます。面接前に背筋を伸ばして深呼吸を数回行うことで、落ち着いた状態で臨めるでしょう。
質問対応時のNG行動
質問に対して長すぎる回答や話題が脱線する問題は、多くの応募者が陥りがちなミスです。面接官の質問に対しては、1分程度を目安に簡潔に回答するのが理想的です。長すぎる回答は要点が不明確になり、短すぎる回答は深みに欠けると判断されます。ポイントを絞った回答を心がけましょう。
抽象的な回答や根拠のない自己PRの危険性も高いです。「私は協調性があります」と言うだけでは説得力がありません。なぜそう言えるのか、具体的なエピソードを交えて説明することで、信頼性のある回答になります。「〇〇な状況で△△したことがあり、その結果□□になりました」という形式で話すと説得力が増します。
否定的な表現や言い訳が多い回答は、マイナスの印象を強めてしまいます。例えば「前職では評価されませんでしたが…」「〇〇が原因で達成できませんでした」といった表現は避け、ポジティブな表現に言い換えることが大切です。失敗談を話す場合も、そこから学んだことや成長した点を強調しましょう。
質問に対して「結論→理由→具体例」の順で回答する技術を身につけると、論理的で説得力のある回答ができます。まず結論を述べ、なぜそう考えるのかの理由を説明し、最後に具体的な事例で補強する構成です。この順序で話すことで、面接官は答えの骨子をすぐに把握でき、好印象を与えることができます。
面接官との関係構築を妨げるNG行動
面接官の話を遮ったり、上から目線で話したりする態度は、最も避けるべきNG行動です。どんなに優れた能力や経験があっても、基本的な礼儀や謙虚さを欠くと、チームの一員としての適性を疑われます。面接官の質問は最後まで聞き、敬意を持って接することが大切です。
企業や競合他社に対する否定的な発言も要注意です。「前の会社は〇〇が問題でした」「御社のライバル企業は△△が足りていない」といった発言は、ネガティブな印象を与えるだけでなく、守秘義務や忠誠心の欠如を疑われる原因になります。批判ではなく、改善点や学びを中心に話すことを心がけましょう。
質問への回答を急ぎすぎて思考プロセスが見えない問題もあります。面接官は「どのように考えるか」というプロセスも評価しています。難しい質問に対しては「少し考えさせてください」と一呼吸置き、整理してから答えることも大切です。思考の過程を示すことで、論理的な人材だと評価されます。
ラポール(信頼関係)を構築するための効果的なコミュニケーション法としては、相手の話に真摯に耳を傾け、適切な相づちを打つことが重要です。また、笑顔や前向きな表情、オープンな姿勢を心がけると、親しみやすさや協調性を示すことができます。面接は相互理解の場であることを忘れないようにしましょう。
【オンライン面接】特有のNG行動と成功のコツ

コロナ禍以降、オンライン面接が一般化しています。対面とは異なる環境で行われるオンライン面接には、特有のNG行動と注意点があります。ここでは、オンライン面接を成功させるためのポイントを解説します。
環境設定のNG事例と対策
不適切な背景環境は、オンライン面接における大きなNG要素です。散らかった部屋や生活感が強く出る物(洗濯物や食器など)が映り込むと、自己管理能力の低さを印象づけてしまいます。背景は、シンプルな壁や書棚など、清潔感のあるものを選びましょう。バーチャル背景を使用する場合も、派手すぎず、プロフェッショナルなものを選ぶことが重要です。
照明不足や逆光で表情が見えない状況も避けるべきです。面接官はあなたの表情を見て、反応や感情を読み取ろうとしています。窓を背にすると逆光になりやすいため、光源は自分の正面か斜め前に設置するのが理想的です。顔全体が明るく見えるよう、必要に応じてデスクライトなどを活用しましょう。
通信環境の不安定さや音声トラブルへの対応不足も問題です。面接前には必ず通信状況をチェックし、可能であれば有線LANを使用するなど、安定した環境を整えましょう。また、イヤホンやヘッドセットを使用すると、音声がクリアになり、周囲の雑音も軽減できます。トラブル発生時の代替手段(スマートフォンのテザリングなど)も準備しておくと安心です。
プロフェッショナルな印象を与える環境設定のポイントとしては、背景はシンプルに、照明は明るく、姿勢が良く見えるよう画面の位置や角度を調整することが大切です。また、面接の10分前には接続テストを行い、カメラやマイクが正常に動作することを確認しておきましょう。事前準備が周到であることも、あなたの仕事への取り組み姿勢を示す重要な要素です。
オンラインコミュニケーションのNG行動
画面を見すぎてカメラ目線になっていない問題は、オンライン面接特有の課題です。画面の相手を見ていると、相手からはあなたが下を向いているように見えます。意識的にカメラを見るよう心がけましょう。難しい場合は、カメラの近くに小さな付箋を貼るなどの工夫も効果的です。目線が合うと、誠実さや自信を感じさせることができます。
声のトーンや表情が乏しく単調になりがちなのもオンラインの特徴です。対面より少し大げさと感じるくらいの表情や声の抑揚が、画面越しでは適切に伝わります。特に笑顔は意識的に作ることで、親しみやすさや前向きな印象を与えることができます。また、姿勢を良くすることで声も通りやすくなります。
オンラインならではの間の取り方の難しさも考慮すべきです。通信の遅延があると、お互いの発言のタイミングがずれ、不自然な間ができることがあります。相手の質問が終わったと思ったら、一呼吸置いてから回答を始めるとよいでしょう。また、相手の話を遮らないよう、相づちは控えめにするのも一つのテクニックです。
画面越しでも熱意と人柄を伝えるためのテクニックとしては、明るく前向きな表情を意識する、声に抑揚をつける、身振り手振りを適度に使うなどが効果的です。また、事前にカメラに映る自分の姿をチェックし、どのように見えるかを確認しておくことも大切です。オンラインならではの特性を理解し、それに合わせたコミュニケーションを心がけましょう。
まとめ:面接成功のための行動とは
面接成功のためには、事前準備と本番での適切な振る舞いの両方が重要です。まず、企業研究と自己分析を十分に行い、志望動機や自己PRを明確にしておくことが基本です。面接当日は、時間管理を徹底し、第一印象を大切にしましょう。
面接中は、質問の意図を理解し、具体例を交えた説得力のある回答を心がけてください。また、姿勢や表情、声のトーンなど非言語コミュニケーションも重要な評価ポイントです。
面接前日には持ち物や経路の最終確認を、当日は身だしなみチェックと時間管理を、面接中は相手の目を見て話すことと適切な姿勢を、面接後は振り返りと改善点の分析を行うというチェックリストを意識すると良いでしょう。
自分らしさを失わずにNG行動を避けるバランスも大切です。過度に緊張して硬くなりすぎず、かといって砕けすぎず、自然体で誠実な姿勢を示すことが理想的です。
面接は練習を重ねることで確実に上達します。模擬面接や録画でのセルフチェックを活用し、継続的に改善していきましょう。失敗を恐れず、経験を積むことが最終的な成功につながります。

