本記事では、業界•キャリア別の適性検査や対策、評価ポイントなどを解説します。転職活動の参考になれば幸いです。
目次
転職活動における適性検査とは?

転職活動における適性検査は、応募者の能力と性格を客観的に測定し、企業が求める人材像とのマッチング度を判断するための評価ツールです。書類選考では見えない応募者の潜在的な能力や、職場での振る舞いを予測するために活用されています。
能力検査と性格検査の2つの軸で構成され、前者では論理的思考力や言語理解力、後者ではストレス耐性や協調性などが測定されます。
単なる足切りツールではなく、配属先の決定や入社後の育成計画にも活用される重要な判断材料となっています。
転職と新卒で異なる適性検査の特徴

中途採用の適性検査では、新卒採用以上に応募者の実務適性や既存組織との相性が重視されます。
新卒採用では基礎学力や潜在能力を中心に測定するのに対し、中途採用では職務経験を踏まえた応用力や、即座に成果を出せる実行力が問われます。管理職候補の場合はリーダーシップやマネジメント適性も評価対象となり、一般社員とは異なる視点で評価されることもあります。
また、転職者の場合は前職での経験やスキルセットと照らし合わせながら結果を解釈されるため、単純な点数だけでなく、キャリアとの整合性も重要な判断基準となります。
中途採用で企業が適性検査を実施する目的
企業が中途採用で適性検査を実施する最大の目的は、職務適性と組織文化とのマッチング度を客観的に確認することです。面接だけでは見極めきれない応募者の本質的な特性を、データとして可視化できる点に大きな価値があります。
早期離職リスクの見極めも重要な目的の一つです。実際に、株式会社マイナビの調査によると転職者の約2割が入社1年以内に離職しています。
さらに、応募者の強みや改善点を把握し、配属部署の決定や入社後の育成計画の策定にも活用される場合もあります。
参照:「『転職活動における行動特性調査2024年版』を発表」株式会社マイナビ
受検方式による違いと注意点

適性検査の受検方式は大きく以下の4つに分類され、それぞれ異なる特徴と注意点があります。
| 受検方式 | 実施場所 | 主な特徴 |
| Webテスト | 自宅のPC | 最も一般的な方式AIなどでの徹底した監視システム問題ごとの時間制限 |
| テストセンター | 専用会場(全国主要都市) | 公平性が最も高い統一環境での実施結果の使い回し可能 |
| ペーパーテスト | 企業の会議室等 | マークシート方式など中小企業で多い従来型の受検方式 |
| インハウスCBT | 企業内のPC | 面接と同日実施が多い企業管理下での受検 |
企業規模や採用職種、セキュリティポリシーなどによって選択される方式が異なるため、事前に把握しておくことで適切な準備が可能となります。
Webテスト
自宅のPCから受検するWebテストは、最も一般的な受検方式です。時間や場所の制約が少なく、リラックスした環境で実力を発揮できることがメリットです。
ただし、近年はAI監視システムやWebカメラによる本人確認が導入されるケースが増えています。また、不正行為防止のため、画面録画や視線追跡技術が使われることもあります。
安定したインターネット環境と静かな受検場所の確保が必須で、システム要件を事前に確認しておく必要があります。
時間制限も厳格に設定されており、問題ごとに制限時間が決まっているため、効率的な時間配分が合否を左右するでしょう。
テストセンター
専用会場で受検するテストセンター方式は、公平性と厳密性が最も高い受検方法です。全国主要都市に設置された会場で、統一された環境下での受検となります。
受検には事前予約が必要で、本人確認書類(運転免許証やパスポート)の持参が必須です。会場では私物の持ち込みが制限され、計算用紙と筆記用具のみが貸与されます。予約システムは先着順のため、希望日時が埋まる前に早めの予約が重要です。
テストによって、前回の受検結果を使い回せる「結果送信」機能があり、毎回受験することなく複数企業で結果を活用できるメリットもあります。
ペーパーテスト
マークシート方式のペーパーテストは、企業の会議室などで実施される従来型の受検方式です。現在も採用している企業も少なくないでしょう。
筆記用具は必ず複数本用意し、特に消しゴムは新品を持参することをおすすめします。マークのずれなどのケアレスミスには注意が必要です。
時間配分は自己管理となるため、腕時計の持参は必須です。全体の問題数を把握し、1問あたりの時間を事前に計算しておき、効率的な解答を心がけましょう。
インハウスCBT
企業内のPCを使用するインハウスCBT(Computer Based Testing)は、面接と同日に実施されることが多い受検方式です。セキュリティが確保された環境で、企業の管理下での受検となります。
面接の前後に実施されるケースが多いため、緊張感を引きずらないよう、気持ちを切り替えることが重要です。また、結果が即座に採用担当者に共有され、その場で合否が決まることもあります。
【業界・キャリア別】転職でよく使われる適性検査の14種

転職市場では業界や職種によって使用される適性検査が異なり、それぞれ重視する能力や特性に違いがあります。自分が志望する業界でよく使われる検査を把握し、的を絞った対策で効率的な転職活動につなげましょう。
これから、主要14種類の適性検査を業界別に詳しく解説します。
【多数の業界】SPI3

SPI3は導入社数約18,000社の最もスタンダードな適性検査で、大手企業から中小企業まで幅広く採用しています。能力検査と性格検査で構成され、総合的な基礎能力を測定します。
対策本や問題集が豊富に出版されており、独学での準備がしやすいのが特徴です。転職者向けには「SPI3-G」という専用バージョンが用意されており、新卒者向けの検査より言語分野の難易度が高いものが出題されます。
「SPI公式サイト」株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
【金融・商社・コンサル】玉手箱

玉手箱は日本エス・エイチ・エル株式会社が提供する適性検査で、特に計数理解力と論理的思考力を重視する金融業界や総合商社で多用されています。制限時間が極めて短く、スピードと正確性の両立が求められます。
GAB形式の図表読み取り問題が特徴的で、複雑なグラフやデータから必要な情報を素早く抽出する能力が試されます。1問あたり数十秒での解答が必要なため、事前の慣れが合否を大きく左右します。
【外資系・大手企業】TG-WEB

TG-WEBはヒューマネージ社が開発した高難易度の適性検査で、外資系企業や国内大手企業の選考で使用されています。従来型と新型の2種類があり、それぞれ出題傾向が大きく異なります。
従来型は暗号解読や推論など、思考力を問う独特な問題が中心です。新型は処理能力重視で、短時間で大量の問題を解く必要があります。論理的思考力の深さを測ることに特化しており、対策なしでの高得点は困難でしょう。
【総合商社・外資コンサル】GAB

GABは日本エス・エイチ・エル株式会社が提供する英語での出題も含む、グローバル人材向けの適性検査です。基本的に言語理解、計数理解、パーソナリティの3科目、テストセンターで受験するC-GABではここに英語が追加された4科目で構成され、特にデータ分析力や英語力が重視されます。
総合商社や外資系コンサルティングファームでの採用が多く、実務で必要となる分析力や判断力を測定します。
【IT・通信・SE職】CAB

CABはIT業界に特化した適性検査で、プログラマーやシステムエンジニアの適性を測定します。性格検査に加え、暗号解読・法則性・命令表・暗算といった論理的思考とアルゴリズム理解力を問う独特な問題構成です。
四則演算や図形配置など、プログラミング的思考を必要とする問題が中心で、文系出身者には難易度が高く感じられます。IT企業の技術職採用では定番の検査となっています。
【中堅企業・メーカー】CUBIC

CUBICは人物評価に特化した適性検査で、中堅企業や製造業で導入が進んでいます。ストレス耐性や対人関係能力を詳細に分析し、職場適応性を重視した評価が特徴です。
性格検査の比重が高く、「信頼係数」を活用して回答に矛盾がないか、結果を信頼できるかが判断されます。一貫性のある回答を行うことが大切です。。
【製造業・サービス業】TAP

TAPは特に職場適応性とストレス傾向をはかる適性検査です。製造業やサービス業など、チームワークと継続的な勤務が重要な業界で活用されています。
能力検査の難易度は他の検査より比較的高く、数理・言語・倫理問題からなります。企業がカスタマイズできる幅が広いのも特徴です。能力検査・性格検査の割合を大きく変更できます。
【ハイクラス転職】BRIDGE

BRIDGEは管理職やエグゼクティブ層向けの適性検査で、リーダーシップとマネジメント能力の測定に特化しています。戦略的思考力や組織運営力など、経営層に求められる資質を評価します。
情報の処理の素早さや正確性などを見られており、年収800万円以上のハイクラス求人では、面接と併用されることが多い検査です。
【ベンチャー・スタートアップ】eF-1G

eF-1Gは完全Web完結型の最新適性検査で、AI技術を活用した結果の分析が特徴です。ベンチャー企業やスタートアップなど、個性やポテンシャルを重視する企業で導入が進んでいます。
短時間での実施が可能で、受検者の負担が少ないのがメリットです。基礎能力だけでなく、発想力や柔軟な思考性など、ベンチャー企業で重視される資質も測定します。
【コンサル・IT系】GPS

GPSは問題解決力と創造性を測定する新しいタイプの適性検査です。コンサルティングファームやIT企業の新規事業開発部門など、イノベーション創出が求められる職種で活用されています。
従来の論理的思考力に加え、発想の柔軟性や問題発見能力も評価対象となります。正解が一つではない開放型の問題も含まれ、思考プロセスそのものが評価されます。
【事務職・一般職】SCOA

SCOAは基礎学力と事務処理能力の測定に特化した適性検査です。事務職や一般職の採用で広く使用され、正確性とスピードのバランスが重視されます。
計算問題や言語問題、読図問題など、実務に直結する能力を測定します。難易度は比較的低めですが、ケアレスミスが命取りとなるため、丁寧な解答が求められます。
【運輸・製造業】内田クレペリン検査
内田クレペリン検査は作業適性と持続的な集中力を測定する、日本独自の心理検査です。運輸業や製造業など、安全性と正確性が求められる職種で使用されています。
単純な一桁の足し算を115回繰り返すシンプルな検査ですが、作業曲線から性格特性や適性を分析します。疲労への耐性や注意力の持続性が評価のポイントとなります。
「内田クレペリン検査サービスページ」株式会社日本・精神技術研究所
【営業職・販売職】V-CAT

V-CATは対人関係能力とストレス耐性の測定に特化した適性検査です。営業職や販売職など、対人場面の多い仕事や企業で扱われています。
持ち味とメンタルヘルスを把握し、本質的な特性や能力が診断される作業検査方式です。性格検査では、外向性や社交性が重点的に測定されます。
「V-CATサービスページ」JMAM日本能率協会マネジメントセンター
【人材・サービス業】DPI/DIST

DPI/DISTは職場適応性とストレス耐性を詳細に分析する適性検査です。人材サービス業や接客業など、企業文化への適合が重要な業界で使用されています。
対人関係処理能力と意欲の両面から評価し、組織への定着可能性を予測します。価値観の一致度も測定されるため、企業とのマッチ度が高い人材の発見に活用されています。
能力検査で測定される4つの分野

能力検査は転職者の基礎的な知的能力を測定する重要な評価項目で、以下の4つの分野で測定しています。
- 言語分野
- 非言語分野
- 英語分野
- 構造把握
それぞれの分野で求められる能力と出題傾向を理解することで、効率的な対策が可能となります。
言語分野で問われる能力と問題例
言語分野では、読解力と語彙力が中心に測定されます。長文読解では重要な情報を正確に抽出する能力が問われます。
問題例

引用:「言語理解-質問サンプル|SHL Direct 日本」:日本エス・エイチ・エル株式会社
要約問題では、複雑な文章を簡潔にまとめる力が試されます。また、論理的な文章構成力も同時に評価されます。
語彙問題では、日常的に使われる熟語や慣用句の理解度がチェックされ、実務での円滑なコミュニケーション能力を測定します。
非言語分野で問われる能力と問題例
非言語分野は数的処理能力と論理的推論力を測定する領域です。損益算や割合計算など、実務にも関わる計算能力が重点的に評価されます。
図表の読み取り問題では、売上推移グラフや市場シェア円グラフなどから、必要なデータを抽出し分析する能力が問われます。
問題例

引用:「玉手箱の計数理解(非言語・数学)のコツ!終わらない人続出?例題・練習問題と解答付き!
推論問題では、与えられた条件から論理的に結論を導き出す思考力が試されます。確率計算も頻出で、リスク評価や意思決定に必要な数理的センスが測定されます。
英語分野で問われる能力と問題例
英語分野はグローバル企業や外資系企業で重視される評価項目で、実務で使える英語力が測定されます。TOEIC形式に準じた出題が多く、リーディングとリスニングの両方が課される場合があります。
問題例

引用:「CUBIC適性検査の英語を完全解説・問題付き!英語なしもあり得ます
長文読解では、内容把握問題から、細部の理解を問う問題まで幅広く出題されます。語彙・文法問題では、一般的によく使われる単語や熟語表現などの理解力が試されます。
構造的把握力で問われる能力と問題例
構造的把握力はSPI3から導入された新しい測定分野で、文章や情報の論理構造を理解する能力を評価します。文章の並び替えや、論理的な文章配列を問う問題が中心です。
因果関係や時系列を正しく把握する力が試されます。プレゼンテーションや報告書作成に必要な、論理的な文章構成力を測定する実践的な内容です。
問題例

複雑な情報を整理し、体系的に理解する能力は、管理職や企画職で特に重視される資質となっています。
性格検査で測定される4つの特性

性格検査は転職者の人物像を多角的に評価し、職場での行動傾向や適応可能性を予測する重要な判断材料です。
一貫性のある回答を心がけ、矛盾した回答をしないことが、良い評価につながるでしょう。
ストレス耐性で問われる能力と問題例
ストレス耐性の測定では、プレッシャー下での対応力と困難な状況への適応性が評価されます。メンタルヘルスの状態も同時に確認され、継続的に高いパフォーマンスを発揮できる心理的な安定性が重視されます。
問題例

引用:「SPIの性格検査とは?」株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
極端にストレスに弱い回答や、逆に全くストレスを感じないという非現実的な回答は、マイナス評価につながる可能性があります。
リーダーシップ適性で問われる能力と問題例
リーダーシップ適性では、意思決定力とチーム統率力が中心に測定されます。
転職者の場合、将来の管理職候補としての潜在能力も見られている可能性があります。状況判断力や問題解決への積極性、責任感の強さなどが、総合的に判断される重要な指標となります。
協調性で問われる能力と問題例
協調性の評価では、チームワークへの貢献度と対人関係の円滑さが測定されます。組織人としての適性が問われます。
問題例

引用:「TG-WEBの性格診断を例題で徹底解説!何がわかる?対策は必要?
日本企業では個人よりもチーム全体の成果を重視する姿勢が評価されがちです。ただし、過度に協調性を強調すると主体性に欠けると判断される可能性もあるため、バランスが重要です。
行動特性で問われる能力と問題例
行動特性では、積極性・主体性と計画性・実行力が評価の中心となります。実際の職務遂行スタイルを予測する質問が出されます。
転職者の場合、これまでの職務経験も照らし合わせて評価されるため、経歴との一貫性が見られる可能性があります。自己PRで述べた強みと矛盾しない回答を心がけ、一貫した人物像を示すことが高評価につながります。
まとめ
転職における適性検査は、単なる選考ツールではなく、企業と応募者の最適なマッチングを実現するための重要な評価手段です。
業界や職種によって使用される検査の種類は異なり、それぞれ重視する能力や特性に違いがあることを理解しておく必要があります。
しっかりとした対策を行い、自信を持って適性検査に臨むことで、理想の転職を実現させましょう。


キャリアアドバイザー、リクルーティングアドバイザー、社内人事などを経て、現在は転職メディア「転テン」の運営を担当。転職に悩む方の力になるべく、リアルな現場経験を活かしたノウハウを発信中。あなたの「キャリアづくり」を応援します。
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